渋谷区弓道連盟も平成21年(2009年)10月には創立60周年を迎えます。 渋谷区内での「弓道」の活動は、明治の末に朝倉氏屋敷内(現在の区立長谷戸小学校隣り)に造られた弓道場、また大正2年(1913年)、現在の広尾病院裏に田丸氏によって建てられた弓道場での活動をもって嚆矢とします。何れも個人所有の道場で、広く区民に利用されるのは昭和48年(1973年)に明治神宮内に造られた至誠館弓道場の完成まで俟たねばなりませんでした。 敗戦後、連合軍GHQの占領下にあっては、弓道の組織的な活動が全面禁止され、弓道の再興は昭和24年(1949年)になって許可されました。そこに至るまで、先輩諸氏の弓道復興にかける並々ならぬ努力がありました。こうして、同年4月に全日本弓道連盟が結成され、その傘下には都道府県ごとに弓道連盟が相次いで発足し、さらに各連盟の下部組織として、道場単位による支部が組織されたのです。 それは従来の「武徳会」の武道のあり方からの決別でもありました。現代弓道の修練の眼目として、「射法、射技の研修」「礼に則した体配の修練」「射品、人間完成の必要」の4つを大きな柱とし、「弓道」をより深く豊かにするものと定めました。このように「弓道」は自己克己の武道として、民主的、平和的、国際的でなければならないとしたのです。 こうした動きに呼応して、区を単位とする組織、渋谷区弓道連盟を結成することになり、昭和24年10月、国学院大学において結成大会を開催いたしました。同年11月には第一回区民弓道大会が同大学の弓道場で盛大に開催されました。 しかし、区内に弓道場が無いため、区民弓道大会は国学院弓道場を借りることが多かったのですが、鉢山中学校の校庭で区民大会を実施したこともあり、会場確保に大いに難渋いたしました。 昭和39年(1964年)に東京都の弓道場が、世田谷区・駒沢公園内に建設され、区民大会は同弓道場で開催されることになりました。
しかし、区内に弓道場が無いのは致命的で、区内の弓人達は、各自近隣の他区の弓道場で、ばらばらに修練することを余儀なくされました。そういう情況の中でも、区民弓道大会は毎年一度も中止することなく開催し、昭和41年(1966年)以降は、春秋2回の大会開催となり、都民体育大会においても第1回から参加し、何回か入賞を果たしております。 昭和60年(1985年)10月、渋谷区スポーツセンターが完成いたしました。待望の弓道場が開設され、渋谷区の弓人達の意志を統合し、新たな渋谷区弓道連盟の活動が始まりました 連盟は指導委員会を設置し、指導体制を作り上げ、渋谷区の弓人に広く門戸を開いたのです。 昭和61年(1986年)7月から開催した「弓道教室」は平成8年度までに合計22回行い、教室修了者が、現在の弓道連盟会員の中核をなしております。 区民大会もその内容を充実し、平成12年(2000年)の秋季大会は第100回大会となりました。平成21年(2009年)の春季大会は回を重ねること115回を数えることになります。
今後の渋谷区弓道連盟には大きな目標があります。 一つは、「弓道」の面白さを広く知って頂くこと。もう一つは「武道」としての本質をその修練の中から会員に深く体得して貰うためです。この両者は相互に関連し合っています。 平成17年(2006年)より、「初心者弓道教室」を再開いたしました。渋谷区民のために広く弓道の楽しさを体験して頂くためです。(平成21年度3月現在、第6回開催中です) 教室の指導員として、教士、錬士の先生方は勿論、かつての弓道教室出身の高段者がボランティアでその任に当たっています。 初心者の方々を指導するということは、同時に自分自身の「弓道」を見つめ、自己の技を謙虚に反省することでもあります。弓道は単に競技だけを目的とするスポーツではありませんが「競技」というからには勝たなければなりません。それも正しい身体の活動と、正しい精神の活躍とがあいまっての勝利であるべきです。そのためにも、連盟の裾野を広く深くすることが我々会員の役割だと思います。 将来に亘って、渋谷区弓道連盟から、心技体備わった真の弓道人が一人でも多く、輩出されるような組織でありたいと思います。
また、弓道は体力に適った弓を使用することで、生涯楽しむことができます。 当渋谷区弓道連盟の初代会長で、全日本弓道連盟会長も務められ、弓道界初十段位を贈られた、故宇野要三郎先生が、こんなことを語っておられます。「私は当年とって84歳(昭和36年)になりますが、過去56年間、私の公的生活において、また私的生活においても、生涯を通じて弓と離れたことはありません。私は弓によって進むべき道を知り、引くべき道を教えられました。今日なお腰も曲がらず、耳目も何ら不自由なく、日々是好日の気分をもって老境を楽しむことを得るのは、全く弓徳の賜であります」と述べておられます 日常の生活の中で、心と身体の修練が同時に行い得る弓道こそ、今後益々耳目を集める武道です。連盟は、弓道の普及発展に一層の努力をいたします。それは高齢化時代の区民の心身共なる健康増進に大いに役立つものであると固く信じて疑いません。
宇野 要三郎 (昭和24年〜昭和30年) 野口 作造 (昭和31年〜昭和40年) 小森 一彗 (昭和40年〜昭和42年) 大森 剛 (昭和43年〜平成 7年) 稲井田 登 (平成 7年〜平成17年) 斉木 辰男 (平成17年〜 現 在 ) TOPへ戻る